●覚 田:
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それは商品になったんですか?
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●武 田:
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第一製薬の「紫電」という商品になりました。「紫電改」というのはね、覚田さんはお若いからご存じないかもしれませんが、海軍の飛行機の名前なんですよ。
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●覚 田:
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あっ、知ってますよ。ゼロ戦の「紫電改」ですよね。
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●武 田:
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そうです。その彼にとって海軍時代の昔懐かしい名前だということでつけたんです。又、紫の美しい黒髪に電撃的に効くという意味もこめて、「紫電」という名前を選んだんです。それから、約40年の間に「紫電」から「紫電改」になって「紫電改Z」となって発売されていったんですよ。
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●覚 田:
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ということは、日本で医薬品としての育毛剤は、センブリの研究開発から始まったということなんですね。先生はそれを作られた方なんですか?
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●武 田:
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基礎開発に携わるというか、「SW(センブリエキス)」を育毛剤として、初めて応用に取り組んだんです。
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●覚 田:
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その後、どのような研究をされたんでしょうか。
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●武 田:
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「塩化カルプロニウム」を開発しました。これは、どうやって開発されたかといいますと、円形脱毛症という病気がありますよね。これは、皆さんご存じかとは思い ますが、今まで伸びてたものが急に抜け出す病気です。突然、毛根が毛を作るのを一斉にやめてしまうのです。ちょうど、動物の毛変わりみたいになってしまうんですね。
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●覚 田:
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急に一気に抜けてしまうんですから、本人は辛いですよね。
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●武 田:
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悩むでしょうね。それで、そのうち円形脱毛症が、よく外来で来るようになったんです。その当時、「オビソート」という局所へ注射する血行促進剤があったんですが、直接頭皮に注射するんですよ。これは痛いんです。
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●覚 田:
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想像するだけで痛そうですね。
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●武 田:
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当時は、育毛には一貫して血行促進作用のあるものが求められていたんです。当時、第一製薬の社長の長男が京都大学の薬学部にいたんですよ。それで彼が、「オビソート」の成分は「アセチルコリン」というんですが、「アセチルコリンには多くの種類があるが、この中から優れたものを選んでくれ」と言ってうちの教室に持ってきたん です。いろんなアセチルコリンの製剤を比較しながら調べてみると、「オビソート」より、5倍から10倍強いのが出てきたんですよ。それが、「塩化カルプロニウム」 なんですね。
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●覚 田:
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それも、医薬品として発売されたんですか。
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●武 田:
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ええ、第2弾の育毛医薬品として登録されました。薬品名としては、第一製薬の「フロージン」と命名されたんです。それを毎日使う育毛剤として販売するためには、何倍かに薄めて、いろんな有効成分を加えて作ったのが、いわゆる「カロヤン」「カロヤンハイ」「カロヤンS」などの一連の育毛剤です。これが第一製薬のカロヤン系育毛剤の一つの流れですね。
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